海の京都物語 第85話 丹後ちりめんの里に息づく西陣の灯、網野「丹後館」を訪ねて|日本酒YUTAKA(豊)

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海の京都物語も、はや第85話を数えるようになりました。舞鶴から宮津・天橋立、伊根、与謝野、そして京丹後市へと、丹後半島をぐるりと巡ってきたこの連載どすが、今回もひきつづき京丹後市のお話をお届けします。

舞台は網野町。これまでにも鳴き砂で知られる琴引浜や、日本海側でも屈指の規模を誇る前方後円墳・網野銚子山古墳、静かな水をたたえる離湖、浦嶋伝説ゆかりの網野神社と嶋児神社など、いろんな顔をご紹介してきましたが、網野町にはもうひとつ、大切な顔がおす。それは「織物の町」としての顔どす。

丹後ちりめんは、1720年に峰山でその技が生まれてから300年あまり、丹後半島全体で受け継がれてきた白生地の絹織物どす。網野もまた、その織物文化を長らく支えてきた町のひとつで、住まいと機場(はたば)がひとつになった機屋(はたや)が、今も集落のあちこちに残っています。ガチャンガチャンと織機の音が響く家並みは、海辺の町・網野が「漁師町」だけやのうて「機屋の町」でもあることを、静かに物語ってくれます。

今日ご紹介したいのは、その網野に2024年、新しく生まれた織りの拠点「丹後クリエイティブセンター 西陣織あさぎ美術館 丹後館」のお話どす。丹後ちりめんの里に、京都の西陣織の技が根を下ろした、ちょっと珍しい出会いのものがたりです。

🧵丹後の地に、西陣織の灯がともる

 「西陣織あさぎ美術館 丹後館」がグランドオープンしたのは、2024年7月26日のことどす。場所は京丹後市網野町網野37-1、丹後クリエイティブセンターの中にあります。運営しているのは京都市下京区に本社を置く和装・洋装の製造卸「ツカキグループ」で、もともと京都市内にある「西陣織あさぎ美術館」の分館として誕生しました。

 網野町といえば、江戸時代から続く丹後ちりめん(白生地の絹織物)の産地として知られていますが、そこに京都の西陣織という、また違う織物文化が新しい形で加わったことになります。「丹後には丹後ちりめんと西陣織、双方の織物文化が息づいている」という考え方のもと、この地に技術継承と人材育成の拠点をつくろう、という思いが込められているそうどす。白生地を織ってきた丹後の腕と、帯や着尺を彩ってきた西陣の意匠が、同じ町の中で向かい合う。そう考えると、なんとも贅沢なめぐり合わせやと思わされます。京都市内の本館と丹後の分館、ふたつの拠点が手を取り合うことで、これまで以上に厚みのある技術伝承の流れが生まれているんやないでしょうか。

🪡職人の技を、その目で見られる場所

 丹後館の魅力は、なんといっても職人さんが実際に織っている様子を間近で見学できることどす。1800口織のジャガード織機を使い、熟練の職人が手がける西陣織は、糸の一本一本に技と時間が織り込まれた工芸品。オープンファクトリーの形をとっているので、訪れた人は美術館としての鑑賞だけやのうて、ものづくりの現場そのものを体感できます。ガチャン、ガチャンと織機が糸を打ち込む音が響く工房は、まさに「生きた博物館」いうた雰囲気どす。

 館内には約40点もの作品が展示されており、その多くは京丹後市内の職人さんの手によるものやそうです。地元に息づく技を活かしながら、西陣織の高度な技法を実践し、次の世代へと受け継いでいく。まさに「伝承の生産基地」としての役割を担うてはる場所どす。丹後オープンファクトリーの期間には、職人さんの手ほどきを受けられるファクトリーツアーが開かれることもあり、織物文化をぐっと身近に感じられる機会になっています。ふだん完成した反物しか目にする機会のない私たちにとって、糸が模様になっていく過程をその場で見られるいうんは、なかなか贅沢な時間どす。

🖼浮世絵とジャポニズムが織りなす世界

 館内は時期によって展示替えが行われており、訪れるたびに違う表情に出会えるのも楽しみのひとつどす。うかがった折には浮世絵やジャポニズムをテーマにした展示が行われているとのことで、日本の美意識が海を越えて西洋に影響を与えたその歴史を、織物という切り口からもういちど見つめ直せる、そんな展示になっているようです。

 丹後ちりめんの白生地づくりを支えてきた職人の町に、京都の織り文化がそっと重なる。300年近い時をかけて紡がれてきた丹後の織物の歴史に、また新しい1ページが加わったんやなあと、しみじみ感じさせられます。

🏘300年、織り継がれてきた町の記憶

 網野町から弥栄町にかけての一帯は、住居と機場が一体になった機屋や商家が軒を連ねる独特の町並みが今も残り、丹後ちりめん創業からの歩みを物語る構成文化財として、日本遺産「300年を紡ぐ絹が織り成す丹後ちりめん回廊」にも数えられています。三角屋根の織物工場がぽつぽつと見える集落を歩いていると、あちこちから機の音が聞こえてきそうな、そんな懐かしい気配がおす。丹後館という新しい拠点も、こうした長い織物の歴史の延長線上に生まれたもんやと思うと、また違った味わいで訪ねられるんやないでしょうか。

📍行っ得メモ

・西陣織あさぎ美術館 丹後館:京都府京丹後市網野町網野37-1(丹後クリエイティブセンター内)
・営業時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
・定休日:火曜日・水曜日、年末年始、お盆期間(8月中旬)、展示替え期間
・駐車場:約10台分(大型バスでの来館は要事前予約)

丹後ちりめんの技を育んできた網野の地に、京都・西陣織という新しい風が吹き込み、また次の百年に向けて糸が紡がれていく。時代を超えて技を受け継いでいくいうんは、実は日本酒づくりも同じどす。蔵人から蔵人へ、代々受け継がれてきた技と想いが、純米大吟醸YUTAKA(豊)の一滴一滴にも込められています。糸を一本一本織り重ねるように、米と水と時間を丁寧に重ねて醸されたお酒を、旅の余韻とともにゆっくり味わうてみてください。

ほな、また次回のお話でお会いしましょう。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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FAQ
Q. 西陣織あさぎ美術館丹後館はどこにありますか?
A. 京都府京丹後市網野町網野37-1、丹後クリエイティブセンター内にあります。丹後ちりめんの産地として知られる網野町の中心部からほど近い立地どす。

Q. 館内では何が見られますか?
A. 1800口織のジャガード織機を使って職人さんが実際に西陣織を織る様子をオープンファクトリー形式で見学できるほか、館内には京丹後市内の職人さんの手による作品を中心に約40点の西陣織作品が展示されています。時期によって展示替えもあり、訪問時は浮世絵やジャポニズムをテーマにした展示が行われているとのことどす。

Q. 営業時間や休館日を教えてください。
A. 営業時間は10:00〜17:00(入館は16:30まで)、定休日は火曜日・水曜日、年末年始、お盆期間(8月中旬)、展示替え期間どす。訪れる前に最新情報を公式サイトなどで確認してから出かけると安心どす。

Q. なぜ京都の西陣織が丹後・網野にあるのですか?
A. 網野を含む京丹後市は江戸時代から続く丹後ちりめんの産地。「丹後には丹後ちりめんと西陣織、双方の織物文化が息づいている」という考え方から、和装・洋装の製造卸ツカキグループが2024年7月、技術継承と人材育成を目的に京都市内の西陣織あさぎ美術館の分館として丹後館を開設しました。

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