海の京都物語 第83話 天女が遺した万病の酒、磯砂山の羽衣伝説を訪ねて|日本酒YUTAKA(豊)

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海の京都物語も、第83話を迎えました。前回までは丹後半島をぐるりと巡りながら、峰山町の丹後ちりめんや常立寺、大宮町の内山ブナ林など、京丹後市の知られざる魅力をお届けしてきました。今回はふたたび峰山町に戻って、ちりめんとはまた違う、峰山町のもうひとつの顔をご紹介したいと思います。

それは、日本で一番古いと言われる「羽衣伝説」どす。天女が舞い降りたという山、その麓に静かに鎮まるお社、そして天女が造ったという不思議なお酒の話。峰山町の南にそびえる磯砂山(いさなごさん)を舞台に、今も語り継がれる物語をたどってみましょう。

京丹後市には「七姫伝説」と呼ばれる、天女や姫にまつわる七つの言い伝えが残っとりますけど、峰山町の磯砂山はその中でも別格どす。全国あちこちに残る羽衣伝説のうち、文献に記された最古の記録がこの峰山町にあるんどすから、峰山っ子としてはちょっと誇らしい話どすなあ。

🏔️天女が舞い降りた山・磯砂山

 磯砂山は標高661メートル、峰山町五箇・鱒留と大宮町上常吉にまたがる山どす。「京都の自然200選」にも選ばれとって、山頂からは天橋立や久美浜湾、大江山連峰まで見渡せる、なかなかの眺めどす。この山が全国的に知られとるんは、奈良時代に編まれた「丹後国風土記」の逸文に記された羽衣伝説の舞台やからどす。

 風土記によりますと、比治山(今の磯砂山)の頂にある真名井と言う井戸に、八人の天女が舞い降りて水浴びをしたそうどす。今も中腹には「女池」という池が残っとって、天女が水浴びしたと伝わる場所として、登山の途中に立ち寄る人も多いんどす。地元の言い伝えの中には、ほんまに天女が羽衣を隠されたんは女池のうてて、もう少し奥にある「男池」の方やという異説も残っとって、こういう細かい違いが伝わっとるのも、長いこと語り継がれてきた証やと思いますなあ。

🍶天女が教えてくれた「万病の酒」

 物語には続きがおす。鱒に住んどった和奈佐(わなさ)の老夫婦が、水浴び中の天女の一人の羽衣を隠してしもたことで、その天女は天に帰れんようになってしまいます。困り果てた天女に、老夫婦は「子どものおらんうちの、わが子になってくれ」と頼みはります。天女は羽衣を返してほしいと願いますけど、老夫婦は聞き入れず、天女は仕方なく十年余りをその家で暮らすことになりました。

 このとき天女がめっぽう上手やったんが、お酒造りどす。一杯飲めば万病がたちまち治るという不思議なお酒を醸し、そのおかげで老夫婦の家はみるみる豊かになり、里も潤うたそうどす。せやからこの地は、のちに「土形の里」「比治の里」と呼ばれるようになったと伝わっとります。蚕を飼い、機を織り、米を作り、酒を醸す。天女が里の人らに授けたいうこの技のなかに、お酒がちゃんと入っとるところが、酒好きのうちらとしては嬉しいところどす。千年以上も前から、この土地とお酒とのご縁は、思うたよりずっと深いんどすなあ。

⛩️鱒の乙女神社と天女の里

 せやけど物語には切ない続きもおす。十余年経って、老夫婦は「お前はほんまの子やない」と天女を家から追い出してしまわはります。悲しみに暮れた天女は各地をさすらい、最後は竹野郡の奈具の村にたどり着いて「ここでようやく心が和んだ」と言い、そこに鎮まって奈具神社の豊宇賀能売命(とようかのめのみこと)として祀られることになりました。この神さんは、伊勢神宮外宮の豊受大神と同じ神さんやとも言われとります。

 磯砂山の西麓、峰山町鱒留(ますどめ)には、この伝説にちなむ乙女神社が今も静かに鎮座しとります。地元に伝わる別のお話では、天女と猟師・三右衛門との間に生まれた三人の娘のうち、長女がここに祀られとって、次女は多久神社、三女は奈具神社に祀られたとも伝わっとります。乙女神社にお参りすると美しい娘を授かるとも言われとって、今も静かに手を合わせに来る人がいはるそうどす。すぐそばには「天女の里」という交流施設もあって、古民家風のコテージやキャンプ場で、羽衣伝説の里の空気をゆっくり味わうことができますんや。

⛩️久次に残る「元伊勢」比沼麻奈為神社

 もうひとつ、峰山町には見逃せんお社がおす。磯砂山から谷ひとつ隔てた久次(ひさつぎ)にある比沼麻奈為神社(ひぬまないじんじゃ)どす。ここは豊受大神を祀る「元伊勢」の一社とされ、伊勢神宮外宮の豊受大神は、もとはこの神社から分けられたご神霊やという言い伝えを持ちますんや。地元では、磯砂山と谷を挟んで向かい合う久次岳のことを、今も「真名井山」と呼びならわしとって、こちらが本当の羽衣伝説の舞台やという説も語られとります。棟札には平安時代の焼失・再建の記録も残っとって、千年近く、この土地の人らが大切にお祀りしてきはったことがようわかりますんや。峰山町の静かな山あいに、日本の神話の源流のひとつが眠っとるんやと思うと、なんや不思議な気持ちになりますなあ。

📍行っ得メモ

・磯砂山:京丹後市峰山町五箇・鱒留(大宮町上常吉にまたがる)、標高661m。登山口は「羽衣茶屋」で駐車場あり、急な階段が続く区間もあるため歩きやすい靴がおすすめどす
・乙女神社:京丹後市峰山町鱒留、磯砂山西麓に鎮座
・天女の里:京丹後市峰山町鱒留1642、駐車場50台(無料)、古民家風コテージ・キャンプサイトあり、通年営業(詳細は要問合せ)
・比沼麻奈為神社:京丹後市峰山町久次宮谷510、元伊勢の一社として豊受大神を祀る

天女が万病に効く酒を造って里を豊かにしたという伝説は、遠い神話の中の話のようでいて、なんや今のうちらの酒造りにも通じるもんがある気がしますなあ。人を笑顔にする一杯を届けたい、そないな願いは、千年前も今も変わらへんのかもしれません。峰山町の山あいを歩いて、そんな物語に思いを馳せてみるのも、ええ休日の過ごし方どすえ。秋には磯砂山の紅葉や、天女の里のもみじも見ごろを迎えますんで、そのころに訪ねてみはるのもおすすめどす。

ほな、また次回のお話でお会いしましょう。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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FAQ
Q. 磯砂山の羽衣伝説とはどんな話ですか?
A. 奈良時代の「丹後国風土記」逸文に記された、日本最古とされる天女伝説です。比治山(今の磯砂山)の真名井で水浴びをしていた天女の一人が羽衣を隠されて天に帰れなくなり、老夫婦のもとで酒造りをして暮らした後、悲しい別れを経て奈具神社の豊宇賀能売命として祀られたと伝わります。

Q. 峰山町の乙女神社はどこにありますか?
A. 京都府京丹後市峰山町鱒留、磯砂山の西麓に鎮座しています。羽衣伝説にゆかりのある神社で、地元の言い伝えでは天女の娘の一人が祀られているとされ、参拝すると美しい娘を授かると言われています。

Q. 比沼麻奈為神社はどのような神社ですか?
A. 京丹後市峰山町久次にある神社で、伊勢神宮外宮の祭神・豊受大神の元宮とされる「元伊勢」の一社です。羽衣伝説に登場する天女は、この豊受大神と同一視されており、峰山町には伝説ゆかりの地が複数残っています。

Q. 磯砂山への登山はどのくらいの人でも楽しめますか?
A. 登山口の「羽衣茶屋」から整備された登山道が続きますが、急な階段が続く区間もあるため、動きやすい服装と履き慣れた靴での訪問がおすすめです。事前に天候や体調を確認のうえ、無理のない計画で楽しんでください。

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