海の京都物語 第87話 標高683メートル、森が香るクラフトジンを訪ねて|日本酒YUTAKA(豊)
海の京都物語も、おかげさまで八十七話を数えるようになりました。今回の舞台は、京丹後市の中でも一段と山深い、弥栄町(やさかちょう)どす。丹後半島のちょうど真ん中あたり、標高683メートルの太鼓山(たいこやま)の中腹に広がる「京丹後森林公園スイス村」の敷地内に、実は今、全国どころか世界からも注目される小さな蒸留所があるのをご存じどしたか。
その名も「京丹後舞輪源蒸留所(まいりんげん じょうりゅうしょ)」。2024年4月にオープンしたばかりの、クラフトジンの蒸留所どす。日本酒とは違うお酒どすけど、同じ「土地の恵みをお酒にする」という仕事をしてはる同志として、今日はこの山の上の蒸留所を訪ねてみようと思います。京丹後市の中でも標高が高く、冬は雪に閉ざされる弥栄町の山間部で、こないな挑戦が続いてるやなんて、なかなか奥が深いですなあ。
弥栄町は古墳や赤米など、古い時代の物語をぎょうさん抱えたまちどすけど、今回は少し目線を変えて、令和のいま、この土地でどんな新しいものづくりが生まれてはるんか、そのお話をさせてもろてもよろしいでしょうか。
車で走ってもだんだん道が細うなって、ほんまにこんな山奥にお店があるんやろかと不安になったころ、ふっと森が開けて現れるのが森林公園スイス村どす。かつては家族連れで賑わうスキー場やったそうどすが、いまはキャンプ場やスノーパークとして姿を変え、季節ごとにいろんな楽しみ方ができるようになってはります。その一角に、静かに蒸留の香りを漂わせているのが、今日ご紹介する舞輪源蒸留所どす。
🌲山頂近く、森が香る蒸留所
舞輪源蒸留所があるのは、丹後天橋立大江山国定公園の中、太鼓山中腹の森林公園スイス村どす。かつてはスキー場として賑わった場所どすが、いまはキャンプ場やスノーパークとして親しまれてはります。その一角、標高683メートルの高みに、蒸留家の真山さんが仕込みをしてはるお店があるんどす。
真山さんはお香職人、茶農家、お寺の庭師を経て蒸留家になったという、なんとも珍しい経歴の持ち主どす。周りの森にはジュニパーベリーやクロモジをはじめ、300種類を超える薬草・薬樹が自生していて、その恵みをそのまま活かした蒸留を毎朝続けてはります。まさに「土地の声を聴き、風土を醸す」という言葉がぴったりの仕事ぶりどす。
しかもこの蒸留所、ただ森の恵みをいただくだけやのうて、蒸留のあとに残った植物のかすを地域の有機農場のコンポストに戻してはるんどす。水源を育む森を守りながら、その森からいただいた分を、また土に還す。そんな小さな循環を大事にしてはるところに、山の上のものづくりらしい誠実さを感じます。
💧二つの水が出会うひとしずく
舞輪源のジンでいちばん面白いのは、水へのこだわりどす。山頂近くから湧く硬度10のとろりと柔らかい水と、山裾から湧く硬度180のしっかりした硬水と、性格の違う二つの水を蒸留のなかでブレンドしてはるんどす。
朝に手摘みした植物を、その日のうちに新鮮なまま蒸留する「フレッシュクラフトジン」は、森の香りがふわりと立ち上がる、芳醇でいて爽やかな一杯に仕上がるそうどす。地元農家が育てるレモンも加わって、山の恵みと里の恵みが一本のボトルの中で重なり合うてる、贅沢なお酒どすなあ。
🏆世界も認めた、山の上のひとしずく
開業からわずか一年ほどで迎えた2025年、世界三大酒類コンペティションのひとつ、SFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)のジン部門で、看板商品「Mairingen Fresh Craft Gin」が最高金賞(ダブルゴールド)を受賞しはりました。もう一つの「Mairingen Extra Fresh Craft Gin 2024」も金賞に輝いてはります。
できたばかりの小さな山の蒸留所が、世界の舞台でこれだけの評価を受けはったんは、ほんまに誇らしいことどす。弥栄町の名前を、こんな形で世界に届けてくれてはるんやなあと思うと、地元でもないのに胸が熱うなります。
審査員が唸ったんは、きっと味だけやのうて、標高683メートルという条件でしか生まれへん、この土地ならではの個性やったんやないかと思います。丹後の山が持つ豊かさが、ちゃんと世界に伝わったということどすなあ。
🍶YUTAKAと、ひとつながりの想い
クラフトジンと純米大吟醸、原料も造り方も違うお酒どすけど、「その土地でしか生まれへんもんを、丁寧な手仕事で一本にする」という志は、どこか通じるものがあるように感じます。ハクレイ酒造の純米大吟醸「豊-YUTAKA-」も、丹後の水と米、蔵人の手仕事があってはじめて生まれるお酒どす。
山の上で森の香りを閉じ込めたジンと、丹後の海と里の恵みを映した日本酒と。どちらも「この土地やからこそ」の一本として、いつか並べて味わうてみたい、そんな夢を持たせてくれる出会いどした。ジンと日本酒、造り方はまるで違いますけど、静かな山や里で、手間を惜しまず一滴ずつ向き合う人がいてはる、という景色はよう似てるように思います。
📍行っ得メモ
・住所:京都府京丹後市弥栄町野中10329-1(京丹後森林公園スイス村内)
・見学・購入は事前予約制、メール(mrg@mairingen.jp)にてお問い合わせを
・営業期間はおおむね4月~12月、営業時間11:00~16:00、不定休(積雪等により変更あり)
・カーナビ等では「森林公園スイス村ビジターセンター」で検索するのがおすすめどす
こんな山深い場所で、丁寧に、丁寧に一滴ずつ生まれるお酒があるんやなあと知って、なんや弥栄町という土地への見方が、また少し豊かになった気がします。
ほな、また次回のお話でお会いしましょう。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 京丹後舞輪源蒸留所はどこにありますか。
A. 京都府京丹後市弥栄町野中10329-1、丹後天橋立大江山国定公園内の太鼓山中腹に広がる「京丹後森林公園スイス村」の敷地内にあります。標高683メートルの山あいに位置しています。
Q. どんなお酒を造っている蒸留所ですか。
A. 森に自生するジュニパーベリーやクロモジなど14種類ほどのボタニカルを、朝に手摘みしてその日のうちに新鮮なまま蒸留するクラフトジンの蒸留所です。看板商品は「フレッシュクラフトジン」と呼ばれています。
Q. 見学や購入はできますか。
A. 見学・購入とも事前予約制で、メール(mrg@mairingen.jp)での問い合わせが必要です。営業期間はおおむね4月から12月、営業時間は11時から16時、不定休で、積雪状況により変更される場合があります。
Q. 日本酒とクラフトジン、どちらも楽しめますか。
A. もちろんどす。造り方も原料も異なりますが、どちらも「その土地でしか生まれない恵みを、手仕事で一本の酒に仕上げる」という点は共通しています。丹後の山が育てたジンと、丹後の水と米が育てた純米大吟醸「豊-YUTAKA-」を飲み比べてみるのも一興どす。
京都 丹後