海の京都物語 第134話 東吉原の日の出湯、番台の灯りがぬくいどすなあ|日本酒YUTAKA(豊)
前回は西舞鶴の吉原入江を歩いて、舟がのぞく水路の町並みをお話ししましたなあ。あの入江からほど近い東吉原の路地奥に、ひっそり佇む昔ながらの銭湯があるんは、ご存じどしたか。今日はその「日の出湯」はんのお話をさせてもらいますえ。
だいだい色と白ののれんが目印の、総二階の木造銭湯どす。表からのぞくだけでも、時代を経た木の色と、ぽってり丸みのある看板文字に、思わず立ち止まってしまう佇まいなんどすなあ。
舞鶴いうたら、明治の終わりから旧海軍の鎮守府が置かれた軍港の街としても知られとります。港や工場で一日働いた人らが、湯気の向こうでほっと一息ついてはった時代もあったんやろなあと、のれんをくぐる前からそんな想像が膨らみますんや。
🏚️大正生まれの町家銭湯
日の出湯の建物が建てられたんは大正六年(1917年)ごろ、実際に湯屋として開業したんは大正九年(1920年)10月1日と伝わっとります。もとは町の共同湯やったのが、大正の頃に個人経営へと移り、長らく地元の家族が代々守ってきはったんどす。
面白いことに、地元の人らは「日の出湯」やのうて、今も昔の屋号のまま「吉田屋」て呼びはるんやそうどす。看板の名前より、暮らしに根付いた呼び名の方が長生きしとるいうんは、なんや温かい話どすなあ。
令和三年(2021年)には、国の登録有形文化財にも登録されはりました。切妻造の総二階建て、瓦葺きの外観そのままに、今も現役の銭湯として営業を続けてはるいうんが、なにより貴重などす。
🎨色とりどりのタイルと五老ヶ岳の水
暖簾をくぐって脱衣場に入ると、壁や床、洗面台のまわりに大小さまざまな色のタイルが張り巡らされとって、昭和の香りいっぱいの可愛らしさどす。天井はほんのり桃色に塗られとって、湯気の向こうでやわらこう浮かび上がるんどすなあ。
お湯にはほぼ百パーセント、井戸から汲み上げた五老ヶ岳の伏流水を使こてはるそうどす。石造りやった浴槽と床は、昭和二十九年(1954年)ごろにタイル張りへ改められましたが、その頃のタイルを今も大事に使いはってます。
🪟番台と二階座敷にみる暮らしの記憶
浴場の真ん中には番台がどんと構えて、男湯と女湯を分けとります。番台に座って一日を眺めてきはった代々の店主さんの姿が、目に浮かぶようどすなあ。
二階には二十畳もある立派な座敷があって、床の間や付書院、違い棚まで備わっとるんやそうどす。かつては近所の寄り合いやお客はんのもてなしに使こてはった名残やて聞くと、ただの銭湯やのうて、町の社交場でもあったんやと感じ入りますんや。
⚓軍港の街と、湯気に包まれた暮らし
舞鶴は明治の終わりから旧海軍の鎮守府が置かれ、軍港として栄えてきた町どす。工場や港で働く人、いろんな暮らしが行き交うこの街で、内風呂のない家も多かった時代、銭湯は一日の疲れを流す欠かせん場所やったんは想像に難うありません。
日の出湯があるのは、江戸時代の大火のあとに開けた漁師町・吉原の一角どす。荒波の海と共に生きてきた町の人らが、湯船につかって体を温めてきはった歴史の重みを、タイルの一枚一枚が今も静かに語りかけてくるようどす。
📍行っ得メモ
・所在地:京都府舞鶴市字東吉原297-2
・定休日:毎週土曜日
・電話:0773-75-0366
・営業時間:夕方16時台~20時前後(資料により表記差があるため事前にお問い合わせください)
・2021年2月4日、国登録有形文化財に登録
湯気の向こうに大正から続く時間が積み重なっとるような、そんな日の出湯どす。舞鶴に行かはったら、一度暖簾をくぐって、地元の人らと同じ湯船で手足を伸ばしてみておくれやす。
風呂上がり、火照った体にきゅっと効くんは、よう冷えた純米大吟醸YUTAKA(豊)どす。五度から十度くらいに冷やして、薄張りのガラスのぐい呑みでいただくと、湯上がりの火照りにすっと寄り添う涼やかな香りと、お米の旨みがふわりと広がりますんや。日の出湯のタイルの艶を思い出しながら、きりりと澄んだ一杯を傾けるのも、また一興どすなあ。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 日の出湯はいつからあるんどすか?
A. 建物は大正六年(1917年)ごろに建てられ、湯屋としての開業は大正九年(1920年)10月1日と伝わっとります。令和三年には国の登録有形文化財にも登録されはった、由緒ある銭湯どすえ。
Q. 「吉田屋」て呼び名は何どすか?
A. 日の出湯は元は町の共同湯で、大正の頃に個人経営へ移った際の屋号が「吉田屋」やったんどす。看板は日の出湯でも、暮らしに根付いた呼び名の方が長生きしとって、今も地元の人らは吉田屋の名で親しんではるんどすなあ。
Q. タイルやお湯に特徴はあるんどすか?
A. 脱衣場には色とりどりのタイルが張られ、ほんのり桃色の天井が昭和の風情を醸しとります。お湯はほぼ井戸水で、五老ヶ岳から湧く伏流水を使こてはるそうどす。浴槽と床は昭和二十九年頃にタイル張りへ改められ、その頃のものを今も大事に使うてはります。
Q. 行くときに気をつけることはありますか?
A. 定休日は毎週土曜日どす。営業時間は資料によって多少表記が違いますよって、行かはる前に電話(0773-75-0366)で確かめてもらうんが安心どすえ。駐車場も限りがありますよって、車で行かはる方はその点もお気をつけて。
京都 丹後