海の京都物語 第295話 井戸枯れで三十年途絶えた酒造りを、女性杜氏がひとり蘇らせた福知山唯一の蔵の物語をお届けしますんえ|日本酒YUTAKA(豊)
海の京都をゆく物語も、気づけばもう第295話。福知山城や明智光秀はんの足跡、由良川の舟運、大江山の鬼伝説——丹波の奥座敷に伝わる話を、これまでぎょうさんご紹介してきましたんえ。
せやけど今回は、ちょっと目線を変えて「福知山の酒蔵」を訪ねてみとうおす。実は福知山市内に、今も昔ながらの酒造りを続けてはる蔵元が、たった一軒だけ残ってるんどす。その名は東和酒造。享保二年、西暦1717年創業という、300年を超える歴史を背負うた蔵どす。
🏯 三百年の歴史を守る、市内唯一の蔵
東和酒造はんは、京都府福知山市字上野に蔵を構える、福知山市内で現存する唯一の酒蔵どす。創業は1717年(享保2年)というさかい、江戸時代中期からこの地で酒を醸してきたことになりますんえ。
せやけど、この蔵にも苦労の時代がありました。昭和50年代、井戸枯れなどの事情で一度は醸造を休止。そのまま30年以上も自醸の灯が消えとったそうどす。
先代が蔵じまいを考えはった時、杜氏として名乗りを上げたんが、蔵元の娘さんどした。平成23年(2011年)、ついに自醸が再開され、蔵の歴史が再び動き出したんどす。
👩🌾 丹波流、初の女性杜氏
蔵を立て直さはったんは、11代目となる杜氏の今川さん。丹波杜氏組合の中でも、丹波流として初めて女性杜氏に認められた方どす。
米の半分は地元・六人部地区で収穫されたものを使い、仕込み水も蔵の井戸水。総米500kg以下という小さな単位で、少量多品種の酒を丁寧に造り分けてはります。しぼりは今も機械に頼らず、昔ながらの木槽(きぶね)しぼりどす。
丹波杜氏の一員として認められたとき、「苦労が報われた瞬間やった」と振り返ってはるそうどす。女手ひとつで蔵を守り抜いた心意気が、一杯一杯の酒に込められてるんやなと思うと、胸が熱うなりますなあ。
🍶 「六歓」と「福知三萬二千石」、ふたつの顔
この蔵の代表銘柄のひとつが「六歓(ろっかん)」。「六感」と、蔵がある「六人部(むくべ)」の歓びをかけた名前どす。地元六人部の米と井戸水、空気、人だけで仕込まれた、まさに土地の名を背負う一本どすな。ラベルは染色作家・弓場直子はんの手によるものえ。
もうひとつの看板が「福知三萬二千石」。これは福知山城主を長く務めた朽木家の石高、三万二千石にちなんだ名前で、福知山の人らに古うから親しまれてきた言葉どす。大吟醸には兵庫県産山田錦を40%まで磨いたもの、「祝大吟醸」には京都府の酒蔵だけが使える酒米「祝(いわい)」を全量使うなど、同じ銘柄の中でも表情豊かに造り分けてはります。
地元の言葉を酒名に刻み、地元の米と水だけで醸す——そないな蔵のあり方を知ると、一杯の盃に福知山という土地そのものが映って見えるような気がしますんえ。
🎁 ふるさと納税でも出会える福知山の地酒
この福知三萬二千石シリーズ、実は福知山市のふるさと納税返礼品としても届けられてるんどす。山田錦の大吟醸や、京都府オリジナルの酒米「祝」を使うた大吟醸など、いずれも冷蔵保存で出荷日から365日という賞味期限つき。20歳未満の方は申し込めまへんので、ご用心を。
蔵へ直接足を運んで購入できるかどうかは要確認どすけど、地元の酒店やふるさと納税を通じて、福知山の地酒を自宅にいながら味わえる時代になったんは、ありがたいことどすなあ。
📍行っ得メモ
・東和酒造:京都府福知山市字上野115・116・117番地(合地)
・アクセス:JR福知山駅からバスで約24分、「生野里」バス停から徒歩5分
・代表銘柄:福知三萬二千石、六歓(ろっかん) ※蔵への直接見学・即売の可否は要確認
・購入方法:福知山市のふるさと納税返礼品、地元酒店など
井戸枯れで一度は途絶えかけた酒造りを、女性杜氏の手でもう一度灯した東和酒造はん。その心意気を知ってから盃を傾けると、福知山という土地への愛おしさがいっそう深まる気がしますんえ。これからも末永う、福知山の地酒が受け継がれていきますように。
そんな福知山の地酒に思いを馳せながら、今宵はYUTAKA(豊)を一献。ひんやり冷やして、薄手のガラスの盃にそっと注げば、秋の澄んだ空気によう似合う涼やかな香りが立ちのぼりますんえ。口に含めば、米の旨味がすっと広がって、すうっと喉を通る後味の良さが、木槽しぼりの地酒にも通じる丁寧な造りを思わせます。福知山の秋の実りと、蔵人はんの手仕事に、静かに盃を掲げとうなる夜どす。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 東和酒造はどこにありますか?
A. 東和酒造は、京都府福知山市字上野115・116・117番地にある酒蔵どす。福知山市内に現存する唯一の蔵元で、JR福知山駅からバスで約24分、「生野里」バス停から徒歩5分ほどの場所にあります。蔵への直接見学や即売所の有無については、訪問前に公式情報でご確認くださいね。
Q. 東和酒造の創業はいつですか?
A. 創業は1717年(享保2年)で、300年を超える歴史を持つ蔵どす。昭和50年代に井戸枯れなどの事情で醸造を休止した時期がありましたが、平成23年(2011年)に蔵元の娘さんが杜氏となって自醸を再開し、今に歴史をつないではります。
Q. 「六歓」の名前の由来は何ですか?
A. 「六歓(ろっかん)」は、「六感」と、蔵がある「六人部(むくべ)」地区の歓びをかけた名前どす。地元六人部で収穫された米と、蔵の井戸水だけで仕込まれた酒で、ラベルは染色作家・弓場直子はんがデザインしてはります。
Q. 福知三萬二千石はどこで買えますか?
A. 大吟醸や「祝(いわい)」米を使うた大吟醸などは、福知山市のふるさと納税返礼品として届けられてます。そのほか地元の酒店でも扱われているそうどすが、取り扱い状況は店舗によって異なるため、事前の確認をおすすめします。
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