海の京都物語 第116話 大浦半島の多禰寺、鬼退治の言い伝えと仁王さんに会いに行くえ|日本酒YUTAKA(豊)
前回は青葉山のふもとに広がる公園で、山を見上げながらひと息つかせてもろたなあ。今回はその青葉山とはまた違う場所、舞鶴湾を挟んだ大浦半島の山懐へ足を延ばしますんや。目指すは、地元でも「山の中の古いお寺さん」として知られる多禰寺どす。
多禰寺は真言宗東寺派、山号は医王山、ご本尊は薬師瑠璃光如来はんどす。舞鶴市内でも指折りの古刹と伝わっていて、麻呂子親王という飛鳥時代の皇子はんにまつわる、鬼退治の言い伝えが残ってますんや。
享保2年(1717年)にまとめられた『多禰寺縁起』にその由来が記されてますけど、実際にどんな事情で開かれたお寺なんかは、はっきりしたことは分かってへんのどす。せやから、これから語る開基のお話は、あくまで語り継がれてきた「伝承」として聞いておくれやす。
🗡️麻呂子親王と七つの薬師如来
寺に伝わる話では、用明天皇2年(587年)、聖徳太子の異母弟にあたる麻呂子親王が、丹後で暴れとった鬼賊を平らげはったんやそうどす。その加護に感謝して「七仏薬師」ゆう七体の薬師如来をお祀りする七つのお寺を丹後の各地に建てはった、いうのが言い伝えどす。多禰寺は、その七番目の薬師さんをお迎えしたお寺やと伝わってますんや。
もちろんこれは寺伝として語り継がれてきたお話で、確かな記録として草創の事情がわかっとるわけやおへん。せやけどこの土地の人らは、七仏薬師の物語を大事に守りながら、平安の頃には七堂伽藍が整うほどの隆盛を見たと伝わってます。鎌倉・室町の戦乱でその伽藍もだいぶ荒れてしもたそうやけど、今も西国薬師四十九霊場の第三十番として、静かにお勤めが続いとりますんや。
⛰️大浦半島・多禰山の中腹という立地
多禰寺があるのは、舞鶴湾からぐいっと海に突き出た大浦半島の、多禰山という山の中腹どす。お寺は標高およそ300メートルのあたり、山頂は556メートルもある、若狭湾国定公園にも含まれる山どすんや。青葉山とはまた別の山どすけど、こちらもなかなかの山岳信仰の気配が漂う、静かな聖地どす。
参道は、麓の舞鶴自然文化園から3キロほど山道を登っていく道のりで、道中には88体もの地蔵さんが並んではるそうどす。息を切らしながら一体ずつお地蔵さんに手を合わせて登っていくうちに、里の暮らしから少しずつ離れて、山の空気に包まれていくのが分かりますんや。イヌシデの巨木林や、フデリンドウ、リンドウいうた花々、アカショウビンやサンコウチョウの声、ニホンカモシカの姿まで見られる、豊かな自然も魅力どす。
🗿鎌倉時代の仁王さんと文化財の数々
多禰寺いうたら、山門に立つ木造金剛力士立像、いわゆる仁王さんが有名どす。鎌倉時代に彫られたはったこの一対は、像高およそ3.5メートルもある堂々としたお姿で、丹後地方でも屈指の大きさやと言われてます。怒りの表情を浮かべながらも品のある佇まいで、腰をひねった体つきが一対としてよう均整が取れとる、ゆう評判どす。
本堂と山門は、2016年3月18日付けで京都府の有形文化財(建造物)に指定されてますし、本堂の中には創建当時のものと伝わる「はぎの柱」や、中井権次一統六代目の手による龍と象の彫刻も残ってます。普賢菩薩騎象像や聖観音菩薩立像も市の文化財に数えられてて、静かな山寺のわりに、見応えのある宝物がぎょうさん詰まっとりますんや。
🌊本堂から望む舞鶴湾の眺め
山道を登り切って本堂の前に立つと、木々の合間から舞鶴湾がきらきら光って見えますんや。海の京都言うても、舞鶴は港町のイメージが強いですけど、こないして山の中腹から静かに海を見下ろす景色も、また格別どす。
仁王さんに見送られながら振り返ると、参道に並んだお地蔵さんの向こうに海が続いとる。信仰の山と、暮らしの海がひと続きになっとるんやなあと、しみじみ感じる眺めどす。
📍行っ得メモ
・住所:京都府舞鶴市字多祢寺346
・宗派:真言宗東寺派(西国薬師四十九霊場第30番)
・車:東舞鶴IC→引き揚げ記念館→舞鶴自然文化園→参道3km→多禰寺(クレーンブリッジ経由は道悪く非推奨)
・バス:東舞鶴駅(京都交通三浜線)「自然文化園」下車→徒歩約3km(便数少なめ)
・タクシー:東舞鶴駅から約40分
・問い合わせ:0773-68-0026(不在時は金剛院 0773-62-1180)
鬼退治の言い伝えも、鎌倉の仁王さんも、山道の地蔵さんも、みんな長い時間をかけてこの山を守ってきはった証どす。息を切らして登った先にある静けさは、都会の暮らしではなかなか出会えへん、贅沢なもんやなあと、しみじみ思いますんや。
そんな山寺の空気を思い出しながら味おうてほしいんが、純米大吟醸YUTAKA(豊)どす。冷酒用の薄張りグラスに注いで、10度前後のよう冷えた温度でいただくと、青りんごのようなすっきりした吟醸香がふわっと立って、すいっと喉を通る辛口の後味が、山を登った後の澄んだ気分にほんまようが合いますんや。仁王さんの凛とした佇まいを思い浮かべながら、静かに盃を傾けておくれやす。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 多禰寺ってどんなお寺どす?
A. 多禰寺は舞鶴市の大浦半島、多禰山の中腹に建つ真言宗東寺派のお寺どす。ご本尊は薬師瑠璃光如来はんで、聖徳太子の弟・麻呂子親王の鬼退治にまつわる言い伝えが残る、市内でも指折りの古刹やと伝わってますんや。
Q. 仁王像はいつの時代のもんどす?
A. 山門に立つ木造金剛力士立像は鎌倉時代の作と伝わってます。像高およそ3.5メートルもある堂々とした一対で、丹後地方でも屈指の大きさやと言われてますんや。本堂・山門も京都府の有形文化財に指定されてます。
Q. 青葉山にあるお寺なんどすか?
A. いえ、多禰寺があるのは青葉山やのうて、舞鶴湾を挟んだ大浦半島の多禰山どす。青葉山には次回ご紹介する松尾寺はんがおますよって、山も由緒も別のお寺やと思うて、間違わんとぎておくれやす。
Q. 参拝の後のおすすめは何どす?
A. 山道を登った後は、麓の舞鶴自然文化園でひと休みしてから、純米大吟醸YUTAKA(豊)を冷やでゆっくり味おうてみておくれやす。仁王さんの凛とした姿を思い出しながら傾ける一杯は、また格別どすえ。
京都 丹後