海の京都物語 第117話 馬頭観音さんの松尾寺、西国二十九番の秘仏どすえ|日本酒YUTAKA(豊)
前回は医王山の中腹に建つ真言宗東寺派の古刹・多禰寺さんのお話をさせてもろうたどすなあ。本尊の薬師如来さんに見守られた、大浦半島の山懐深いお寺どしたわ。舞鶴には青葉山の懐にも、そないな古刹がもうひとつございましてなあ、今回はそちらの西国三十三所第二十九番札所・松尾寺さんを訪ねてみとうおすえ。
松尾寺さん言うたら、西国三十三所の中でもちょっと変わったお寺どすねん。本尊さんが観音様言うても馬頭観音さんやいうのは、三十三所広しと言えどここだけどすし、青葉山の中腹いう、なかなかの山道を登った先にあるお寺どす。
うちも子供の頃、家族でお参りに連れて行ってもろうたことがおすんやけど、山門をくぐった瞬間の、しんとした空気の澄み具合は今でも覚えとりますわ。今日はそないな松尾寺さんの歴史と信仰について、じっくりお話しさせてもらいますな。
🐴唐から渡来した威光上人と馬頭観音の伝承
松尾寺さんの始まりは、唐から渡ってきはった威光上人という僧侶にまつわる伝承どす。慶雲年間(704~708年)に青葉山へ登らはった上人が、松の大樹の下で馬頭観音を感得しはって、和銅元年(708年)にこの地へ草庵を結び、馬頭観音像を安置しはったんが起こりやと伝わっとります。
ただ、これはあくまで寺伝としての伝承どすさかい、正確な史実として断定できるもんやおへん。奈良時代の始まりに近い、ぎょうさん古いお寺やということだけは確かどすなあ。
宗派は真言宗醍醐派、本尊は馬頭観音菩薩坐像どす。西国三十三所の観音霊場の中で、馬頭観音さんを本尊にしてはるんは松尾寺さんだけやそうで、しかも普段は秘仏として扉の奥に安置されとります。
⛩️西国第二十九番札所として歩んだ歴史
松尾寺さんは西国三十三所観音霊場の第二十九番札所として、古くから巡礼のお方を迎えてきはりました。平安時代の元永二年(1119年)には鳥羽天皇と皇后・美福門院さんが行幸しはって寺領を賜り、その後は寺坊が六十五を数えるほど栄えたそうどす。
せやけど栄枯盛衰いうもんはどこにでもあるもんで、松尾寺さんも五度の火災に見舞われてしもたんどす。今のお堂は江戸時代の享保十五年(1730年)、田辺藩主やった牧野英成公の力添えで整えられたもんやそうどすえ。
秘仏の本尊さんは、平成二十年から二十一年(2008~2009年)にかけて七十七年ぶりの結縁開帳が行われたそうで、そのときにお参りしはった方は、ほんまにええご縁を頂かはったんと違いますやろか。
🖼️国宝の仏画と国指定の仏舞
松尾寺さんには国宝に指定された仏画「絹本著色普賢延命像」が伝わっとります。平安時代末期の作で、1952年に国宝指定を受けはった、鳥羽天皇の皇后・美福門院さんの念持仏やったと伝わる、色彩豊かで典雅な一幅どす。
もうひとつ忘れたらあかんのが「仏舞」どす。大日如来・釈迦如来・阿弥陀如来の三尊のお面をつけたお方が、雅楽・越天楽の調べに合わせてゆるやかに舞わはる神事で、毎年五月八日の正午過ぎに本堂で奉納されとります。国の重要無形民俗文化財にも指定されとって、江戸時代初期にはもう記録が残っとったそうどすえ。
本堂・経蔵・仁王門は京都府指定の有形文化財にもなっとります。ひとつのお寺の中に、国宝・国指定・府指定と、いろんな格の文化財が揃うとるいうんは、なかなか贅沢なことどすなあ。
🍁青葉山中腹を彩る秋の景色
松尾寺さんは青葉山の中腹という立地柄、秋になると境内が色づいて、参拝したお方のブログなんかでも「見事な紅葉」と評されとります。山門から本堂へ続く参道を、赤や黄色の葉が彩る様子は、山寺ならではの趣どすなあ。
ただ、紅葉の見頃時期について寺院の公式な発表は確認できまへんでしたさかい、お出かけの際は事前にお寺さんへお問い合わせいただくんがよろしおすえ。
📍行っ得メモ
・住所:京都府舞鶴市字松尾532
・電話:0773-62-2900
・拝観時間:8:00~17:00
・拝観料:無料(宝物殿拝観は別途、要問合せ)
・アクセス:JR小浜線松尾寺駅から徒歩約50分/東舞鶴駅からバス約18分「松尾寺口」下車、徒歩約40分/舞鶴若狭自動車道舞鶴東ICから約8km
・駐車場:2箇所(計100台程度)
・仏舞:毎年5月8日正午過ぎに本堂で奉納(国指定重要無形民俗文化財)
馬頭観音さんに見守られながら、幾度もの火災を乗り越えて千三百年近く続いてきはった松尾寺さん。山道を登った先で出会う静けさは、他所ではなかなか味わえへん、特別なもんどす思いますわ。
そないな松尾寺さんの秘めやかな空気にお供えするんやったら、純米大吟醸YUTAKA(豊)は少し冷やして12度くらい、口の細い涼やかなガラスの盃でどうぞ。馬頭観音さんの穏やかな佇まいのように、ふわりと立つ上品な吟醸香と、すっと喉を通る澄んだ甘みが、山寺の静寂によう馴染む一献になりますんえ。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 松尾寺の本尊はどんな仏さんどす?
A. 本尊は馬頭観音菩薩の坐像どす。西国三十三所観音霊場の中で、馬頭観音さんを本尊にしてはるんは松尾寺さんだけやそうどすえ。普段は秘仏として扉の奥に安置されとって、平成二十年から二十一年にかけて七十七年ぶりの結縁開帳が行われましたんや。
Q. 松尾寺はいつ頃開かれたお寺どす?
A. 寺伝によりますと、唐から渡ってきはった威光上人が慶雲年間に青葉山で馬頭観音を感得しはって、和銅元年(708年)に草庵を結ばはったんが始まりと伝わっとります。ただ、これはあくまで寺伝の域を出んもんで、正確な史実として断定はできまへんのどすなあ。
Q. 松尾寺の仏舞てどんな行事どす?
A. 毎年五月八日の正午過ぎに本堂で奉納される神事どす。大日如来・釈迦如来・阿弥陀如来のお面をつけたお方が、雅楽・越天楽の調べに合わせてゆるやかに舞わはるもんで、国の重要無形民俗文化財にも指定されとります。江戸時代初期には既に記録が残っとったそうどすえ。
Q. 松尾寺へはどうやって行ったらよろしい?
A. JR小浜線・松尾寺駅からやと徒歩で五十分ほどかかりますよって、東舞鶴駅からバスで「松尾寺口」まで行って徒歩四十分か、お車で舞鶴若狭自動車道の舞鶴東ICから約八キロいうんが便利どす。駐車場もおすさかい、山寺言うても訪ねやすいお寺どすえ。
京都 丹後