海の京都物語 第145話 佐波賀だいこん、蘇った無敵の辛さどすえ|日本酒YUTAKA(豊)
前回は舞鶴発祥の京のブランド野菜、万願寺甘とうのお話をさせてもろうたけど、覚えといやすか。肉厚で甘うて、焼いても揚げても美味しいあの唐辛子どしたなあ。今日はおんなじ舞鶴の畑から、ちょっと毛色の違う主役を連れてきましたんえ。名前は「佐波賀だいこん」。甘とうとは違うて、こっちは根っからの辛味自慢の大根どす。
佐波賀言うのは、舞鶴の海に近い集落の名前どす。海風の吹く畑で育つその大根には、他所のだいこんにはない、ちょっとドラマチックな来し方があるんどすえ。うちも舞鶴で生まれ育った身として、この子の話をするたび、なんや誇らしいような、切ないような気持ちになりますんや。
🌾 「無敵だいこん」と呼ばれた時代
佐波賀だいこんの元になったんは、嘉永・安政の頃から佐波賀のあたりで作られとった「地だいこん」やそうどす。江戸の終わりからずっと、この土地の人らが種を継いできはったいうことどすなあ。
その地だいこんが花開いたんが、戦後の昭和30年代どした。あんまり出来がええもんやから「無敵だいこん」と呼ばれて、年に1500トン以上も出荷されとったそうどす。舞鶴のあちこちの食卓に、この大根が乗っとったんやろなあと思うと、なんや胸が熱うなりますなあ。
📉 半世紀、静かに眠っとった大根
せやのに、そないに勢いのあった佐波賀だいこんも、昭和33年頃を境に急に姿を消してしまわはったんどす。理由は、栽培に手間ひまがかかりすぎたことやそうどす。普通の大根なら3か月ほどで収穫できるところ、佐波賀だいこんは秋に種を蒔いて、翌年の2〜3月にやっと収穫する「晩成型」。しかも根が太うて重たいさかい、引き抜く力仕事も相当なもんやったみたいどす。
手間のかかる伝統野菜より、育てやすい野菜を選ぶ時代の流れもあって、作り手さんがどんどん減っていかはった。そうして佐波賀だいこんは、長いこと畑から遠のいてしまわはったんどすなあ。
🌱 京都府が守っとった種と、蘇った畑
そのまま忘れられてしもうても不思議やなかった佐波賀だいこんどすけど、京都府がずっと種を大切に保管しといやしたんが大きゅうおましたなあ。平成22年から、その種を使うて生産を復活させる取り組みが始まりましたんえ。
平成24年12月には、生産者のみなさんに加えて、イオンリテール株式会社、京都丹の国農業協同組合、京都府、舞鶴市が力を合わせて「京の伝統野菜 佐波賀だいこん食文化振興協議会」を立ち上げはりました。約半世紀ぶりに、佐波賀の畑にあの大根が戻ってきたんどす。せやけど作り手さんの数は今も限られとって、令和7年度の時点でも生産者は7名どす。守り継ぐいうんは、ほんまに根気のいることなんやなあと思わされますなあ。
🔪 だいこん本来の辛さと、崩れん身の詰まり方
佐波賀だいこんは、根元がどっしり太うて、先の方に向かってすうっと尖っていく形どす。葉っぱも濃い緑色で、普通の大根の倍ほどの枚数がつくそうどすえ。
いちばんの自慢は、水分が少のうて身の詰まった歯ごたえどす。おろしても水っぽうならんし、大根本来の風味と辛さがしっかり残るんやそうどす。それに煮くずれしにくいさかい、おでんなんかの煮物にはほんまにようけ向いとるんどすなあ。葉っぱにはビタミンやカロテン、ミネラル、食物繊維もぎょうさん含まれとるそうで、根っこも葉っぱも余さず使える、頼もしい大根どす。
🌊 舞鶴生まれの三兄弟、次の世代へ
「京の伝統野菜」いうんは、明治以前から京都府内で作られてきた野菜のうち、条件を満たしたもんだけが認定される、由緒正しい肩書どす。舞鶴発祥のもんは「佐波賀だいこん」「佐波賀かぶ」「舞鶴かぶ」の三つだけやそうで、佐波賀だいこんはその一角を担っとるんどすなあ。
今では舞鶴市内の小中学校でも、佐波賀だいこんについての出前授業が14校で行われとるそうどす。子どもたちが自分の郷の大根の来し方を知って、また次の世代に語り継いでいってくれはったら、うちも嬉しゅうおますなあ。
📍行っ得メモ
・販売時期は1月中旬から3月上旬ごろどす
・舞鶴市内の直売所やスーパーなどで手に入りますえ
・お問い合わせは京都にのくに農業協同組合 舞鶴東地域農業振興係(0773-63-2072)まで
いっぺんは姿を消してしもうた大根が、種を守り続けた人らと、また育てようと手を挙げた人らのおかげで戻ってきはった。そない思うと、何気ない一本の大根にも、ちゃんとご縁と物語があるんやなあとしみじみ思いますんえ。
佐波賀だいこんは、おでんなんかの煮物にしても崩れんと、じんわり出汁を含んで美味しゅうなる子どす。冷やしたおでんの大根を頬張って、そこへ純米大吟醸YUTAKA(豊)をひと口。すっきりした吟醸の香りが、大根の甘みと辛みの奥にすうっと入り込んで、後味をきりりと締めてくれますんえ。おろしただいこんに軽う醤油を垂らして、YUTAKAを冷やでちびりとやるんも、根っこの辛さと米の旨みが響き合うて、これがまた堪えられしまへんのどす。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 佐波賀だいこんって何どすか?
A. 舞鶴市佐波賀地区で育てられてきた京の伝統野菜どす。嘉永・安政の頃からの地だいこんが元で、戦後は「無敵だいこん」と呼ばれるほど盛んに作られとりました。水分少のうて身が詰まった、辛みと歯ごたえが自慢の大根どすえ。
Q. どうして一度姿を消したんどすか?
A. 普通の大根の倍近い期間をかけて育てる晩成型で、根も太うて重たいさかい引き抜く労力も大変やったそうどす。手間のかかる伝統野菜より育てやすい野菜が好まれる時代の流れもあって、昭和33年頃から急速に作り手が減ってしまわはったんどす。
Q. どないして復活しはったんどすか?
A. 京都府が大切に保管しとった種を使うて、平成22年から生産復活の取り組みが始まりましたんえ。平成24年12月には生産者や京都丹の国農業協同組合、イオンリテール、京都府、舞鶴市が「食文化振興協議会」を立ち上げて、本格的に取り組んどるそうどす。
Q. いつ、どこで手に入りますか?
A. 販売時期は1月中旬から3月上旬ごろどす。舞鶴市内の直売所やスーパーなどで手に入りますえ。詳しいことは京都にのくに農業協同組合 舞鶴東地域農業振興係にお問い合わせいただくのがよろしおすなあ。
京都 丹後