海の京都物語 第151話 工場か学校か言われたグンゼ博物苑どす、波多野鶴吉はんの志が今もなお繭蔵にそっと息づいとります|日本酒YUTAKA(豊)

•

 海の京都物語、今回で百五十一話を数えることになりましたんえ。舞鶴、宮津、伊根、京丹後、与謝野と海沿いのまちを巡ってきましたが、今日は少し内陸に足を延ばして、綾部のまちへお邪魔しますえ。

 綾部いうたら、実はニッポンを代表する繊維メーカー・グンゼはんの発祥の地どす。海から離れた盆地のまちが、なんで世界的な企業のふるさとになったんか。その謎解きに、あやべグンゼ資料館「グンゼ博物苑」を訪ねてみましたんえ。

🏭 明治二十九年、郡是製絲の旗揚げ

 郡是製絲株式会社、いまのグンゼはんは明治29年(1896年)、波多野鶴吉はんによって綾部の地に創業されましたんえ。鶴吉はんは安政5年生まれの綾部延町の出、若い頃は京都で学問や政治を志すも思うようにいかず、失意のうちに故郷へ戻らはったそうどす。

 小学校の教員をしとった頃、養蚕農家の子どもらが厳しい環境で働く姿を目の当たりにし、さらに東京の品評会で京都の繭や生糸が「粗悪品」やと酷評されたことに衝撃を受けはったんやとか。蚕糸業をなんとかせなあかん、それが天命やと悟った鶴吉はんは、明治29年に会社を興し、明治34年(1901年)に社長に就任しはったんどす。

📖「表から見れば工場、裏から見れば学校」

 鶴吉はんが何より大事にしはったんは、繭でも資本でもなく「社会からも、職工からも十二分に信用を得たる経営者その人」やったといいます。「至誠」いう言葉を人生哲学の中心に置き、従業員教育に力を入れ、会社は「表から見れば工場、裏から見れば学校」と称されるほどやったんどすて。

 資料館の展示を眺めとったら、当時の工女さんらが機械の前で真剣な眼差しを向けとる古写真に出会いましたんえ。厳しい労働環境が社会問題にもなっとった時代に、教育を軸に据えた経営を貫いた鶴吉はんの覚悟が、写真の向こうから伝わってくるようどした。

🏛️ 大正の繭蔵がよみがえったグンゼ博物苑

 グンゼ博物苑は平成8年(1996年)、グンゼ創立100周年を記念して開苑された施設どす。大正時代に建てられた繭蔵を改装したもので、「創業蔵」「現代蔵」「未来蔵」いう3つの展示蔵で、グンゼのあゆみを紹介しとります。敷地内には製糸業にゆかりの深い桑の品種を集めた庭園も設けられとりますんえ。

 平成26年(2014年)には隣接して「あやべグンゼスクエア」もオープンし、特産品を扱う館やバラ園も併設されて、家族連れでも楽しめる一角になっとります。入館料は無料、綾部の産業史をたっぷり味わえる贅沢などすなぁ。

 繭蔵の梁や柱に触れながら歩いとったら、百三十年前にここから始まった小さな会社が世界的な企業へ育っていった時の流れを、肌で感じましたんえ。

📍行っ得メモ

・所在地は綾部市青野町亀無1番地の2どす
・開苑時間は10:00〜16:00、休苑日は火曜(祝日の場合は翌日)とお盆・年末年始どす
・入苑無料、駐車場は普通車53台・大型車2台完備どす
・JR綾部駅北口から徒歩約10分、車なら舞鶴若狭自動車道「綾部IC」から約5分どす

 波多野鶴吉はんが遺しはった「至誠」の心と「教育」の理念は、百三十年経った今も繭蔵の中にちゃんと息づいとりました。海の京都から少し内陸へ足を延ばすだけで、こんな骨太な産業の物語に出会えるんやから、綾部いうまちはほんまに奥が深いどすなぁ。

 資料館を出た帰り道、綾部の水を思いながら純米大吟醸YUTAKA(豊)を冷酒でいただきましたんえ。すっと澄んだガラスの酒器に注いで、キリッと冷やした一杯を口に運ぶと、鶴吉はんが大切にしはった「至誠」の実直さと重なるような、まっすぐで澄んだ味わいが広がりますんえ。繭蔵の静けさを思い出しながら、ゆっくり時間をかけて味わう晩どした。

ほな、また次回のお楽しみに。

これからもどうぞよろしくお願いします。

大吟醸KYOTO YUTAKAを見る/購入する

FAQ
Q. グンゼ博物苑の入館料はいくらどすか
A. グンゼ博物苑は入苑無料で楽しめる施設どす。大正時代の繭蔵を改装した「創業蔵」「現代蔵」「未来蔵」の3つの展示蔵があり、駐車場も普通車53台・大型車2台分完備されとりますので、車で気軽に立ち寄れますんえ。

Q. グンゼいう社名の由来はなんどすか
A. 「郡是」とは、明治の実業家・前田正名はんが説いた「国是・県是・郡是・村是」という考え方に由来しとります。郡(地域)ごとの産業指針という意味を込めて、波多野鶴吉はんが会社の理念として名付けはったんどすえ。

Q. あやべグンゼスクエアて何どすか
A. 平成26年(2014年)にグンゼ博物苑に隣接してオープンした複合施設どす。地元の特産品を扱う館やバラ園も併設されとって、博物苑で綾部の産業史に触れたあとに、お土産探しや花見でのんびりできる一角になっとりますんえ。

Q. 綾部散策のあとに合う一献はどれどすか
A. 郡是製絲の「至誠」の精神を思いながらいただくなら、純米大吟醸YUTAKA(豊)を冷酒でどうぞ。すっきりと澄んだ喉ごしが、繭蔵の静けさや鶴吉はんのまっすぐな生き方と重なって、綾部の歴史散策の余韻をゆっくり味わえますんえ。

0件のコメント
ブログに戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。