海の京都物語 第186話 早朝の桁引き網漁と一年がかりの養殖、宮津湾に育つ幻の高級貝・とり貝のお話をさせてもらいますえ|日本酒YUTAKA(豊)
「海の京都物語」もこの186話まで来させてもろて、今日も宮津の海の話をさせてもらいますえ。宮津市言うたら天橋立や智恩寺はんが有名どすけど、今日は少し目先を変えて、宮津湾の海の底にひっそり育つ、ある貝のお話をさせてもらいますんえ。
その名も「丹後とり貝」。地元の方や料理自慢のお店では知られた高級食材どすけど、実は天然物と養殖物とで、まったく違う物語を持ってはるんどす。今日はその両方をじっくりご紹介させてもらいますえ。
🦪夜明けと共に始まる、天然とり貝の桁引き網漁
天然の丹後とり貝は、毎年7月に漁が解禁されますんえ。熊手のような形をした桁に網を取り付けて、海の底をそっと掻いて獲る「桁引き網漁」いう漁法どす。せやけど漁ができるんは朝5時から9時までのわずかな時間だけ。日が高うなる前の、静かな海の上で勝負が決まるんどすなあ。
乱獲を防ぐために、1隻あたり1日30個までいう決まりがあって、宮津の海には約30隻の漁船が出ますよって、海全体で獲れる数もおのずと限られますんえ。それだけ大事に扱われとる貝やさかい、身の詰まった立派な一枚は一個5千円を超えることもあるそうどす。夜明けの海に漕ぎ出す漁師はんの姿を思い浮かべながらいただくと、また味わいも深まりますなあ。
🌊コンテナの中で一年がかりに育つ、養殖とり貝
一方の養殖とり貝は、京都府農林水産技術センター海洋センターが稚貝を育てる技術を確立しはったことで始まったんどす。孵化させた稚貝をコンテナに入れて海の中に吊るし、アンスラサイトいう砂状の粒を敷いて、じっくり約一年をかけて育てますんえ。
コンテナの中には貝を5個から10個ほどしか入れん、ゆったりとした密度で育てて、月に一度はコンテナを洗うて清潔に保ちますのや。そうして手塩にかけて、宮津の海では年間約1万個ほどが出荷されますんえ。天然物の豊凶に左右されん、安定した美味しさを届けられるんは、こういう丁寧な仕事があってこそどすなあ。
🏅京のブランド産品として歩んできた道のり
丹後とり貝は平成20年(2008年)に、水産物としては初めて「京のブランド産品」に認証されましたんえ。翌平成21年(2009年)には地域団体商標にも登録されて、名実ともに丹後を代表する味覚として認められたんどす。
宮津市と舞鶴市の観光協会はんが力を合わせて「宮津天橋立とり貝昼処マップ」いうもんも作らはって、地元のお店で気軽に味わえるように工夫してくれてはります。旬の初夏になると、地元の料亭はんの店先にも「とり貝あります」の案内が出て、なんや心が躍りますなあ。
🍽湯通しでいっそう際立つ、とり貝本来の甘み
とり貝言うたら、握り寿司や刺身、酢の物で親しまれてきた食材どすけど、実は軽う湯通ししたり、さっと炙ったりすると、甘みがいっそう引き立つんどす。生のコリコリとした歯応えと、火を通したときのふくよかな甘さと、二つの表情を楽しめるんが、この貝の贅沢なところどすなあ。
宮津の料亭はんでも、季節ごとに刺し身やお寿司、焼き物といろんな形で出してくれはりますよって、旬の便りを聞いたら、ぜひ一度お店を訪ねてみとうなりますなあ。
📍行っ得メモ
・天然とり貝の漁期は毎年7月解禁、漁は朝5時から9時までの限定操業
・養殖とり貝は京都府農林水産技術センター海洋センターの技術で通年安定生産、出荷まで約1年
・平成20年(2008年)に水産物として初の「京のブランド産品」認証、翌年に地域団体商標登録
・「宮津天橋立とり貝昼処マップ」掲載店(料亭ふみやなど)で味わえる
天然と養殖、二つの道のりを経て食卓に届く丹後とり貝。どちらの一枚にも、宮津の海と人の手間ひまがぎゅっと詰まってますんやなあ。そう思うて口にすると、いつもの一枚がまた格別な味わいに感じられますえ。
そんな丹後とり貝には、純米大吟醸YUTAKA(豊)を少し冷やして、十度前後でいただくのがようございますんえ。口の広いグラスに注いで、まずは軽う湯通ししたとり貝を酢の物でひと口。貝の甘みと日本酒のふくよかな米の旨みが重なりおうて、宮津の海の恵みを二重に味わえるような、贅沢なひとときになりますのや。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 丹後とり貝の旬はいつどすか?
A. 丹後とり貝は初夏が旬とされ、資料によって6月から7月ごろ、あるいは4月下旬から6月下旬ごろと、幅のある紹介のされ方をしとります。天然物は7月解禁の限られた期間しか獲れんため、まさに一年に一度の楽しみどすなあ。詳しい時期は年によって前後しますよって、お店に確認してみてくださいね。
Q. 天然物と養殖物はどう違いますか?
A. 天然の丹後とり貝は毎年7月解禁、朝5時から9時までの限られた時間に桁引き網漁で獲られ、1隻あたり1日30個までという制限もありますんえ。一方の養殖物は京都府農林水産技術センター海洋センターの技術で稚貝から約1年かけて育てられ、天然物のような豊凶の差が少なく、安定して食卓に届けられるんどす。
Q. とり貝はどこで味わえますか?
A. 宮津市と舞鶴市の観光協会はんが作らはった「宮津天橋立とり貝昼処マップ」に掲載されとるお店で味わえますんえ。料亭ふみやをはじめ地元の飲食店で、握り寿司や刺身、酢の物など、いろんな形で提供してもろてます。旬の時期にお出かけの際は、ぜひ足を運んでみてください。
Q. とり貝にはどんなお酒が合いますか?
A. 軽う湯通ししたとり貝の甘みには、十度前後に冷やした純米大吟醸YUTAKA(豊)がようお似合いどす。口の広いグラスでゆっくり香りを開かせると、貝の旨みと吟醸香が重なりおうて、宮津の海の恵みをより豊かに感じていただけますんえ。
京都 丹後