海の京都物語 第277話 町人やのに帯刀許された宮津一の豪商どす、旧三上家住宅で酒造りと廻船業・和糸問屋の記憶をたずねてきましたんえ|日本酒YUTAKA(豊)
海の京都物語、気がつけば277話を数えますんどす。舟屋の町並みや天橋立の景色、宮津節の粋をたどってきましたこの連載どすが、今日はちょっと趣向を変えて、宮津城下に今も残る豪商の屋敷をたずねてみとうなりましたんえ。
向かいましたんは、宮津駅から歩いて十五分ほどの字河原に建つ「旧三上家住宅」どす。国の重要文化財に指定された、宮津随一の豪商・三上家の屋敷どすが、実はこのお家、酒造りにも深う関わってはった歴史がありますんえ。秋の澄んだ空気の中、白壁の町家をゆっくり訪ねてまいりました。
🏯 町人やのに帯刀を許された豪商どす
三上家は江戸時代、酒造業・廻船業・和糸問屋という三つの家業を営んではった豪商どす。宮津藩の財政が苦しゅうなった折には用立てをしはったそうで、その功あって町人の身でありながら帯刀も許されたという、えらい格式のお家どすんえ。
安永五年(1776年)に分家して屋敷を構えはったんどすが、天明三年(1783年)の宮津大火で一度焼けてしもて、その年のうちに主屋がほぼ再建されたそうどす。その後も新座敷棟や庭座敷棟と、商売の繁盛に合わせて増築が重ねられてきましたんえ。
🍶 「都小町」「大天橋」を醸した酒蔵どす
三上家の酒造りでは「都小町」「大天橋」いう銘柄を醸してはったそうどす。酒造業は昭和五十年(1975年)まで続いたと伝わっとって、屋敷内には今も酒造りに使われた施設の面影が残っとりますんえ。
白壁の土蔵造りで、火災に備えて住宅全体を蔵のように耐火構造にしてあるんが、この屋敷のおもしろいとこどす。秋の柔らこい光が白壁に差し込む様子は、かつて蔵人はんが酒を仕込んではった頃の静けさをそのまま残しとるような気がしましたんえ。
🏛️ 文化財8棟と名勝庭園の見どころどす
平成元年(1989年)にまず京都府指定有形文化財となり、平成十五年(2003年)には主屋はじめ八棟が国の重要文化財に指定されましたんえ。平成十二年(2000年)には宮津藩御用庭師・江戸金はんが手がけたと伝わる庭園が、京都府指定名勝「三上家庭園」になってますんどす。
細長う伸びた池と、石組みが起伏に富んだ築山が印象的な庭どす。座敷に腰を下ろして目の高さで眺めると、ちょうど借景のように庭が広がって見えて、商いに明け暮れた旦那さんらもこないして一服してはったんやろなあと、ついしんみりしてしまいましたんえ。
🧵 丹後ちりめん回廊の物語にも連なるんどす
平成二十九年(2017年)には「丹後ちりめん回廊」を構成する文化財の一つとして、日本遺産にも認定されましたんえ。糸問屋としての顔も持ってはった三上家の歴史が、丹後ちりめんの物語ともしっかり結びついとるんどす。
📍行っ得メモ
・アクセス:京都丹後鉄道宮津駅から徒歩約15分、宮津天橋立ICから車で約8分
・営業時間:9時~17時(入館受付16時30分まで)、水曜定休(祝日の場合は開館)、入館料は大人300円どす
・ひとこと:館内にはカフェも併設されとって、庭を眺めながらひと息つけますんえ
酒蔵としての顔、廻船問屋としての顔、糸問屋としての顔、ひとつの屋敷に幾重にも重なった商いの記憶をたどらせてもろて、宮津いう町の懐の深さをあらためて感じさせてもらいましたんえ。
三上家の酒蔵の記憶に思いを馳せながら、今宵はYUTAKAを常温でいただくことにしましたんえ。薄手のガラスの盃にそそぐと、すっと澄んだ米の旨みが鼻先に広がって、白壁の屋敷でひっそり醸されてきた酒たちに思いを馳せる、静かなひとときになりました。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 旧三上家住宅はどんな建物どす?
A. 宮津随一の豪商やった三上家の屋敷どす。江戸時代に酒造業・廻船業・和糸問屋を営んで、町人の身でありながら帯刀も許されたという格式のあるお家どす。国の重要文化財に指定された八棟の建物と、京都府指定名勝の庭園が今も大切に残されとりますんえ。
Q. 三上家はどんな酒を造ってはったん?
A. 「都小町」「大天橋」いう銘柄を醸してはったと伝わっとります。酒造業は昭和五十年(1975年)まで続いたそうで、屋敷内には当時の酒造施設の面影も残っとるんどす。宮津の城下町に根付いた酒造りの歴史を感じられる、貴重な場所どすえ。
Q. 旧三上家住宅へのアクセスは?
A. 京都丹後鉄道の宮津駅から歩いて約十五分、車やったら宮津天橋立ICから約八分どす。無料の駐車場もありますさかい、天橋立観光の合間にふらっと立ち寄ってもらうのにちょうどええ距離どすんえ。開館は九時から十七時まで、水曜定休どす。
Q. YUTAKAはどんな温度で飲むのがおすすめ?
A. 常温でいただくと、米の旨みがすっと広がって、すっきりした飲み口を楽しんでもらえますんえ。薄手のガラスの盃に注いでもろたら、澄んだ色味と香りもいっそう引き立ちますさかい、秋の夜長にゆっくり味わうてみておくれやす。
京都 丹後