海の京都物語 第94話 久美浜の豪商が遺した、明治の粋と庭の物語|日本酒YUTAKA(豊)

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 海の京都物語もいよいよ第94話。京丹後市の旧六町を巡るこの旅、今回もまた久美浜町にお邪魔しますえ。これまで、かぶと山からの絶景や神谷太刀宮、小天橋のかき養殖、久美浜湾に伝わる龍の伝説など、海と湾にまつわる話をいろいろお届けしてきましたが、今日はちょっと目線を変えて、久美浜の「町なか」に残る一軒の屋敷にスポットを当ててみようと思うんどす。

 久美浜町3102番地。京都丹後鉄道・久美浜駅から歩いてほんの10分ほどのところに、白壁と瓦屋根が美しい大きなお屋敷が建っとります。その名は「豪商 稲葉本家」。江戸時代から続く久美浜屈指の豪商・稲葉家の旧宅で、今は国の登録有形文化財として、また観光施設として一般に公開されとるんどす。

 見た目にも風格のあるこのお屋敷、実は久美浜の経済や交通の歴史そのものを物語る、生き証人のような場所どす。今回はその歩みを少し丁寧に辿ってみましょ。

📖麹屋から掛屋へ、久美浜きっての豪商

 稲葉家は、初代・喜兵衛が興したと伝わる家どす。家伝では、戦国武将・稲葉一鉄の一族の末裔とされとりますが、これはあくまで家に伝わる由緒で、学術的な系譜の裏付けまでは確認できておりません(この点は後ほどの注記でも触れますえ)。

 はっきりしとるのは、1756年(宝暦6年)に稲葉家が幕府の公金を預かる「公金預かり所」となり、そこから後に「掛屋」——今でいう銀行のような金融業——へと商いを広げていったことどす。久美浜の湊町という土地柄もあって、稲葉家は商業と金融の両輪で財を成していきました。

 その繁栄がどれほどのものだったかというと、12代目・稲葉市郎右衛門は1884年(明治17年)、地租780円を納め、京都府で一番の高額納税者になったと伝わっとります。今の価値に直すと1,700万円ほどとも言われる金額どす。久美浜という一つの町から、京都府一の納税者が出ていたというのは、なかなか驚きの話やと思いませんか。

📖明治の粋を集めた、登録有形文化財の主屋

 現在私たちが目にすることのできる主屋は、12代目・市郎右衛門の代、明治時代に建てられたものどす。国の文化財データベースによると、木造2階建・瓦葺で建築面積390平方メートルという堂々たる規模。地元の大工・黒崎文吉が手がけたとされ、切妻造の伝統的な意匠に、近代的な中廊下の間取りを組み合わせた、明治期らしい和風建築の粋が詰まっとります。

 この主屋は2003年(平成15年)1月31日に国の登録有形文化財となり、あわせて長屋門や土蔵といった附属の建物も登録を受けとります(なお、登録棟数の数え方は資料によって表記の揺れがあり、詳しくは末尾の注記をご覧くださいませ)。階段や天井、欄間、床柱に至るまで丁寧に造り込まれた館内は、当時の職人技をじっくり味わえる空間どす。

📖佐野藤右衛門の庭と、ハート形に光る猪目窓

 屋敷の見どころは建物だけやおへん。庭園は、仁和寺出入りの庭師として知られる植藤造園・十六代佐野藤右衛門の手による枯山水どす。芝と苔の築山を主体に、久美浜湾の景色を表現したと伝わり、母屋からゆったりと眺められるよう設計されとります。

 渡り廊下でつながる離れ「吟松舎」は江戸時代の建物で、こちらにも趣ある庭が広がっとります。さらに館内には「猪目窓」と呼ばれるハート形の窓があり、10月中旬から12月ごろにかけて、日差しが差し込むとハート形の光が室内に映るというんどす。今はちょっとしたフォトスポットとしても人気を集めとります。

📖鉄道を拓いた13代目、今に受け継がれるぼたもち

 稲葉家の物語には、もう一つ大きな功績があります。13代目は私財を投じて、昭和4年(1929年)の久美浜・豊岡間の鉄道開通に尽力したと伝わっとります。今の京都丹後鉄道宮豊線につながるこの路線がなければ、久美浜の暮らしも今とは違う形になっていたかもしれません。地域のために私財を惜しまなかった、その心意気が伝わってくる話どす。

 現在、稲葉本家は入館無料で公開され、離れ「吟松舎」では職人が一つひとつ手作りする名物「ぼたもち」がいただけます(1月〜4月にはいちごぼたもちも登場するそうどす)。敷地内では陶芸やお香づくりの体験工房もあり、久美浜の歴史散歩の締めくくりにぴったりの場所どす。

📍行っ得メモ

・住所:京都府京丹後市久美浜町3102
・営業時間9:00〜16:00、定休日は毎週水曜日、入館無料
・アクセス:京都丹後鉄道「久美浜駅」から徒歩約10分/市営無料駐車場2ヵ所あり
・名物「ぼたもち」は離れ「吟松舎」で。陶芸・お香づくり体験は有料・要予約
・猪目窓にハート形の光が差すのは10月中旬〜12月ごろが目安

 掛屋として久美浜の信用を支えた稲葉家の商い、そして明治の職人が手間ひまかけて仕上げた屋敷の粋——そういう積み重ねの美しさは、純米大吟醸「YUTAKA」の一滴にも通じるものがある気ぃしますんどす。よう冷えたガラスの盃に注いで、庭を渡る風や、猪目窓に射す光を思い浮かべながら、きゅっと一献。華やかな香りとすっきりした余韻が、ぼたもちのやさしい甘さともよう合いますえ。久美浜の町なかを歩いた後の一杯に、ぜひ添えてみてください。

 久美浜湾だけやのぅて、町の中にもこんな豊かな歴史が息づいとる——そう思うと、久美浜町がますます愛おしゅうなりますな。稲葉本家の屋敷を訪ねたら、ぜひ庭の風景と猪目窓の光を、ゆっくり味わってみてくださいませ。

 そして帰り道か、その晩の食卓ででも、純米大吟醸「YUTAKA」を一杯どうぞ。久美浜の豪商が遺した明治の粋に思いを馳せながら飲む一杯は、きっと格別どすえ。

ほな、また次回のお楽しみに。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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FAQ
Q. 豪商稲葉本家はどこにあり、どうやって行けますか?
A. 京都府京丹後市久美浜町3102にあり、京都丹後鉄道「久美浜駅」から徒歩約10分どす。市営の無料駐車場も2ヵ所あるので、お車での来訪も便利どすえ。

Q. 見学するのにお金はかかりますか?
A. 建物内の見学は入館無料どす。ただし敷地内で体験できる陶芸やお香づくりの工房は有料・予約制となっとりますので、体験したい方は事前にお問い合わせくださいませ。

Q. 稲葉本家の建物はいつ頃建てられたものですか?
A. 現在の主屋は明治時代、12代目・稲葉市郎右衛門の代に建てられたもので、木造2階建・建築面積390平方メートルの堂々たる建物どす。2003年に国の登録有形文化財に登録されとります。

Q. 純米大吟醸YUTAKAはどんな場面で楽しむのがおすすめですか?
A. 稲葉本家のような歴史ある建物や庭園を眺めながら、静かにゆったりとした時間の中で味わっていただくのがおすすめどす。よく冷やしてガラスの盃で、または常温で、和菓子や郷土の味と合わせても楽しめますえ。

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