海の京都物語 第95話 峰山町久次、「豊」の名の源流をたどる比沼麻奈為神社|日本酒YUTAKA(豊)

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 海の京都物語も、いよいよ第95話。峰山町・丹後町・弥栄町・久美浜町・大宮町と六つの旧町をぐるりと巡ってきましたが、峰山町だけはこれで七回目のご紹介になります。丹後ちりめんの歴史、峰山藩の面影、如意寺の宝珠、磯砂山の羽衣伝説……いろいろ歩いてきましたけど、峰山町は京丹後市の行政の中心地だけあって、まだまだ語り尽くせん奥行きがあるんどす。

 今日ご案内するんは、峰山町久次(ひさつぎ)の山あいにひっそり鎮座する比沼麻奈為神社(ひぬまないじんじゃ)。実はうちの純米大吟醸「豊-YUTAKA-」の「豊」の字、この神社の御祭神と無縁やないんどす。ちょっと系譜をたどってみまひょ。

🌾豊受大神と「豊」の一字がつなぐご縁

 比沼麻奈為神社の御祭神は、豊受大神(とようけのおおかみ)。社伝によれば「遠き神代の昔、この真名井原の地にて田畑を耕し、米・麦・豆などの五穀を作られた」神さんとされ、丹後の地に初めて稲作を伝えた神として祀られています(参考:京丹後ナビ)。五穀豊穣を司る最高神――まさに「豊かさ」そのものを体現する神さんどすな。

 さらに興味深いんは、この神社が『延喜式』にも記された古社であり、伊勢神宮外宮の御祭神・豊受大神は、もともとこの地から遷られたものやという「元伊勢」伝承を持つこと。804年成立の『止由気太神宮儀式帳』には「丹波国比治乃真奈井」の御饌都神が外宮の旧地であると記されているそうどす(※ただし、同じく元伊勢を称する丹後一宮・籠神社の摂社「真名井神社」との間で、どちらが本来の旧地かという論があり、確定した史実ではありません)。

 社殿は伊勢の神宮と同じ「神明造」。棟札の記録では1051年に旧社殿が焼失し、1053年に再建されたと伝わり、現在の本殿は1922年頃、拝殿は江戸後期の文政期の造営とみられています。派手さはないけれど、千年近い祈りの積み重ねを感じさせる佇まいどす。

🌙月の輪田と大饗石、稲作発祥の風景

 神社の近く、峰山町二箇と苗代の間には「月の輪田(つきのわだ)」と呼ばれる三日月形の水田史跡があります。名前の由来はそのまま、田の形が三日月に見えることから。『丹後旧事記』などには、豊受大神が天照大神のためにここで籾を蒔き、稲作をされた場所と伝わっています。かつては耕作放棄地になっていたものの、2013年の「丹後建国1300年」を記念して復興され、今では古代米が育てられ、収穫したお米が伊勢神宮に奉納されることもあるそうどす。

 もうひとつ、久次岳(ひさつぎだけ・標高541.4メートル)の中腹には「大饗石(おおみあえいし)」という巨石があります。高さ2メートル、幅3メートル、奥行6メートルほどの真っ平らな一枚岩で、注連縄が掛けられ、豊受大神が天照大神のために御饌(みけ)――お食事――を捧げられた石やと伝わっています。久次集落の登山口から徒歩約1時間かかる、ちょっとした山歩きになりますが、里の暮らしと神話がすぐそばで結びついている土地柄を実感できる場所どす。

⛰️久次岳という「ご神体山」と峰山の日常

 久次岳は地元で「真名井山(まないやま)」とも呼ばれ、比沼麻奈為神社のご神体山とされています。南へ5キロほど行けば、以前このシリーズでもご紹介した磯砂山(羽衣伝説の舞台)があり、この一帯全体が豊受大神信仰と天女伝承の重なり合う、丹後でも屈指の「神話の里」を成しているんどすな。

 峰山町の中心部からは車で少し入った静かな山里ですが、久次の集落を歩けば、田んぼの向こうにお社の杜が見え、季節ごとに稲穂や新緑、紅葉が移ろう景色に出会えます。派手な観光地ではないぶん、ゆっくり手を合わせて、丹後の「豊かさ」の原点に触れられる場所やと思います。

📍行っ得メモ

・所在地:京都府京丹後市峰山町久次(字宮ノ谷)※資料により地番表記に510・661など揺れがあり、訪問前に最新情報のご確認をおすすめします
・アクセス:京都丹後鉄道宮豊線「京丹後大宮駅」から車で約17分(西へ約8.5km)、府道659号・国道482号経由
・参拝は基本的に自由ですが、社務所の対応時間や御朱印の有無は事前に京丹後市観光公社などでご確認を(要確認)
・月の輪田は神社近くの峰山町二箇・苗代地区の田園地帯に所在。田植え・稲刈りの時季は特に風景が美しいどす
・大饗石は久次岳中腹にあり、登山口から徒歩約1時間。軽登山の装備でお出かけを

 峰山町久次の田んぼを歩いていると、千年以上前から続く「豊かさを願う祈り」が、今も変わらず息づいているんやなあと感じます。純米大吟醸「豊-YUTAKA-」の一杯を傾けながら、五穀豊穣の神さんが最初に稲を育てたと伝わるこの地に思いを馳せてみるのも、また格別の味わいになるんやないでしょうか。冷やしてすっきり、あるいは常温でふくよかに――どちらの温度でも、「豊」の名にふさわしいまろやかな旨みを楽しんでいただけます。

ほな、また次回のお楽しみに。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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FAQ
Q. 比沼麻奈為神社と伊勢神宮はどんな関係があるんどすか?
A. 比沼麻奈為神社は『延喜式』にも記された古社で、伊勢神宮外宮の御祭神・豊受大神がもともとこの地から遷られたと伝わる「元伊勢」の一社です。ただし同様の伝承を持つ社が他にもあり、確定した史実というより古くからの言い伝えとして受け継がれています。

Q. 月の輪田はいつ見学できますか?
A. 田んぼは屋外の史跡で、通年見学いただけます。特に田植えの時期(初夏)や稲刈り前(初秋)は、三日月形の水田の姿がよくわかり、風景としても美しい季節どす。古代米が育てられているため、収穫期は色づきも楽しめます。

Q. 大饗石まで行くには登山の準備が必要ですか?
A. はい、久次集落の登山口から山道を徒歩約1時間ほど歩く必要があり、軽い登山の装備がおすすめです。真っ平らな巨石が中腹にあり、豊受大神が天照大神へお食事を捧げたと伝わる神聖な場所とされています。歩きやすい靴でお出かけください。

Q. 純米大吟醸「豊-YUTAKA-」はどんなシーンで飲むのがおすすめですか?
A. 五穀豊穣の神さんゆかりの地に思いを馳せながら、ゆったりとした夜にお楽しみいただくのがおすすめどす。冷やでもすっきり、常温でもふくよかな旨みが広がりますので、その日の気分や合わせるお料理に応じて温度を選んでみてください。

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