海の京都物語 第305話 明治二十六年創業の飯尾醸造はんどす、棚田の無農薬米と山の伏流水が醸す富士酢の物語を訪ねるお話どす|日本酒YUTAKA(豊)
海の京都物語も第305話を数えましたなあ。天橋立の絶景やら智恩寺の智慧やら、宮津の名所はぎょうさんご紹介してきましたけど、今日はちょっと目先を変えて、宮津の「食」を支える蔵元のお話をさせてもらいますえ。
宮津市小田宿野、天橋立からもほど近い山あいの集落に、明治26年創業の酢蔵「飯尾醸造」はんがありますんや。全国にその名を知られる「富士酢」を醸す蔵元どすけど、その仕込みの奥には、三代にわたって守り抜かれた一つの決断があるんどす。
🍶 明治26年創業、杜氏の手仕事
飯尾醸造はんの創業は明治26年(1893年)。せやから、もう130年以上もこの小田宿野の地で酢を醸し続けてきはったことになりますなあ。冬になると杜氏はんが蔵に泊まり込みで、米麹づくりから酒母づくり、もろみの仕込みまで、約100日間かけてじっくり「酢もと」となるもろみ(お酒)を仕込まはるんどす。
出来上がったもろみは、「古式静置発酵」いう昔ながらのやり方で酢に仕上げられますんや。発酵だけで約100日、そのあとの熟成にもたっぷり240日から300日以上。急がず慌てず、酢酸菌の力だけを信じて待つ――そんな手間のかかる仕事が、今も変わらず続けられとります。
🌾 三代目が貫いた無農薬米の決断
富士酢の味を支えとるのは、丹後の山里の棚田で育てられた無農薬米と、山から湧き出る伏流水どす。輸入の有機栽培米にはいっさい頼らず、地元の田んぼで穫れたお米だけを、たっぷり使わはるんが飯尾醸造はんの流儀どす。
この無農薬米へのこだわりが始まったんは、昭和30年代のこと。当時、田んぼへの農薬散布がどんどん広がっていく中、三代目の飯尾輝之助はんが「それでも無農薬の米で酢を造る」と決めはったんどす。その志は四代目、五代目へとしっかり受け継がれ、今では蔵人はん自らが田んぼに出て米作りもしはるそうどすえ。
👨🌾 五代目と、田植えでつながるご縁
現在の蔵を支えはる五代目は、1975年に宮津で生まれはった飯尾彰浩はん。大学でお酢の研究をしはったあと、一度は会社員としてコカ・コーラはんの営業も経験しはってから、2004年に蔵へ戻らはったそうどす。
2004年に入らはってからは、2007年からお客さんと一緒に田植えをする交流イベントも始めはったんどす。酢造りを蔵の中だけで完結させんと、棚田に足を運んでもろて、米作りから一緒に味わってもらう――そないな開かれた酢蔵の姿が、今の飯尾醸造はんの魅力どすなあ。
🏔 若狭湾の気候風土と富士酢プレミアム
宮津は若狭湾に面して、昼と夜、夏と冬の寒暖差が大きい土地どす。この気候風土が、稲作にも酢造りにもよう合うとるんやそうで、長い年月をかけて丹後の地に酢造りの技が根付いてきたんですなあ。
時を経て「富士酢プレミアム」も、20年もの歳月をかけて完成させはりました。繊細で円熟した旨みが評判を呼んで、ミシュランの星を持つお店でも使われとるそうどす。昔ながらの手間を守りながら、新しい味わいにも挑み続ける――それが飯尾醸造はんのものがたりどす。
📍行っ得メモ
・所在地:京都府宮津市小田宿野373
・営業時間:8:00〜17:00
・定休日:土曜・日曜・祝日
・訪問の際は事前に蔵元へご確認くださいませ
酢言うたら、ただの調味料に思いがちどすけど、飯尾醸造はんの酢もとを覗かせてもろたら、まるで小さな酒蔵のような手間と時間が詰まっとるんがようわかりますなあ。三代目はんの「それでも無農薬で」いう決断が、今日の富士酢の味を支えとるんやと思うと、何や胸が熱うなりますわ。
そないな酢蔵の手間仕事を思いながら、純米大吟醸YUTAKAはひんやり冷やして、薄手のガラスの盃でいただくのがようございます。富士酢でしめた鯖の酢締めなんぞをアテに、きりっと冷えたYUTAKAを口に含んだら、米から生まれた旨みと酸味が舌の上でそっと重なって、宮津の恵みをいっぺんに味わえる気がしますんや。
ほな、また次回のお楽しみに。
これからもどうぞよろしくお願いします。
FAQ
Q. 富士酢はどこで買えますんどすか?
A. 富士酢は宮津市小田宿野の飯尾醸造はんで直接購入できるほか、百貨店や通販サイト、ふるさと納税の返礼品としても取り扱われとります。純米富士酢のほか、富士酢プレミアムや富士玄米黒酢など種類も豊富どすので、お好みに合わせて選んでみとくれやす。
Q. 飯尾醸造はんの創業はいつどす?
A. 飯尾醸造はんは明治26年(1893年)の創業で、130年以上にわたって宮津市小田宿野の地で酢を醸し続けてきはりました。三代目の代に無農薬米へのこだわりを貫く決断をしはってから、その志は四代目、五代目へとしっかり受け継がれとります。
Q. 無農薬米にこだわるのはなぜどす?
A. 昭和30年代、田んぼへの農薬散布が広がっていく中で、三代目の飯尾輝之助はんが「それでも無農薬の米で酢を造る」と決めはったんがきっかけどす。食の安全と地元農家とのつながりを大切にする姿勢が、今も蔵人はん自らの米作りという形で受け継がれとります。
Q. YUTAKAはどないして飲んだらええ?
A. 富士酢を使こうた酢の物や〆鯖なんぞをアテに、純米大吟醸YUTAKAはひんやり冷やして薄手のガラスの盃でいただくのがおすすめどす。米から生まれた酸味と旨みが重なり合うて、宮津の恵みをいっぺんに味わえる組み合わせになりますえ。
京都 丹後